著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)
「全部自分でやらないといけない」
一人社長なら、誰でもこの言葉に頷くと思う。営業も経理もマーケティングも、何なら備品の発注まで自分。人を雇えば楽になるのは分かっている。でも固定費が怖い。外注すれば月数十万円。結局、自分の時間を削るしかない。
僕もずっとそうだった。この記事では、僕がAIを使って「一人なのにチームがいる状態」を作った方法を、具体的に書く。
前提:僕の状況
株式会社ラズリの代表をしている。中小企業のバックオフィス業務を効率化する事業を運営している会社だ。
クライアントとのミーティングや提案、導入支援といった本業以外に、集客のための記事作成、経理処理、事務作業など付随するタスクが山のようにある。
それらを全部自分でやっていた。本業に集中したいのに、雑務に追われて1日の稼働が12時間を超えることもあった。この状況を変えたかった。
最初の失敗:AIに「全部やって」と頼んだ
最初に試したのは、ChatGPTに「SEO記事を書いて」と丸投げすることだった。
結果は使い物にならなかった。内容が薄い。どこかで見たような一般論ばかり。ターゲットに刺さらない。修正に時間がかかって、結局自分で書き直した方が早い。
「AIは使えない」と一度は諦めかけた。
ただ、冷静に考えると原因は明確だった。人間の新人に「とりあえず全部やって」と言っても品質は出ない。AIも同じだ。
転機:役割を分けたら品質が変わった
ある時、試しにAIへの指示を分解してみた。
「競合の記事を調べて、構成を考えて、下書きを書いて、チェックして」という一連の流れを、1つのAIに全部やらせるのではなく、工程ごとに分ける。リサーチはリサーチだけ。執筆は執筆だけ。チェックはチェックだけ。
それぞれの工程で「何を見て、何を判断して、何を出力するか」を具体的に決めた。
これだけで、出てくるアウトプットの品質が明らかに変わった。
つまり、AIに必要なのは「優秀さ」ではなく「明確な役割」だった。人間の組織と全く同じだ。
今の体制:AIチームの中身
現在、僕のAIチームは以下のような役割分担になっている。
| 役割 | やっていること |
|---|---|
| 戦略担当 | 事業の方針決定、優先順位の判断 |
| 実行管理 | タスクの割り振り、進捗の確認 |
| SEO担当 | キーワード調査、記事の執筆、品質チェック |
| 事務アシスタント | 日報作成、データ整理 |
ポイントは、これらが「ツール」ではなく「チームメンバー」として動いていることだ。朝になると今日のタスク一覧が届き、夕方には日報が上がってくる。僕がパソコンを開いていなくても、作業は進んでいる。
音声入力で指示を出す
もう1つ、運用で大きかったのが音声入力だ。
日中はクライアントとのミーティングや導入支援に時間を使っている。パソコンに向かって長文を打つ余裕がない。だから、移動中や休憩中にスマホに向かって喋って指示を出している。
「今日の記事のテーマはこれ。ターゲットはこういう人。この切り口で書いて」
これだけで、AIチームが動き始める。音声をテキストに変換して、それがそのまま作業指示になる。
1日の稼働は15分以内
今の僕の自社事業に対する1日の稼働時間は、平均15分以内だ。
朝にAIチームからの報告を確認する。問題がなければ承認する。方針を変えたい時だけ指示を出す。それだけで、記事は量産され、SNSは更新され、日報は蓄積されていく。
以前は「自社事業の時間が取れない」というのが最大のストレスだった。今は、本業のエンジニア業務に集中しながら、自社事業も並行して進められている。
月額コスト:約2万円
気になるコストの話をする。
AIツールの利用料は月額約2万円。これで、SEO担当1人分と事務アシスタント1人分に相当する作業量をカバーしている。
仮に同じ業務を人に頼んだ場合、SEOライターのアルバイトで月10〜15万円、事務アシスタントで月8〜12万円。合計で月20万円前後はかかる。
月2万円で同等の作業量が出るなら、一人社長にとっては現実的な選択肢だと思う。もちろん、人間と全く同じ品質ではない。ただ、「何もできない」と「月2万円で7割の品質で回る」の差は大きい。
一人社長がAIを使うコツ
約半年間、この体制で運用してきて分かったことをまとめる。
1. ルールを言語化する
AIは察してくれない。「いい感じにやって」では動かない。
「記事のターゲットは従業員5〜30人の中小企業の経営者」「誇大表現は使わない」「数字を入れる」。こうした判断基準を文章で書き出しておく。面倒だが、一度書けば何度でも使える。
2. 段階的に構築する
最初から完璧な体制を作ろうとしない。まず1つの業務だけAIに任せる。うまくいったら次の業務を追加する。
僕も最初はSEO記事の下書きだけだった。そこから徐々に、チェック工程、日報、タスク管理と広げていった。
3. 完璧を求めない
AIのアウトプットは70〜80点だと思っておく。100点を求めると、結局自分で全部やり直すことになる。
70点で出てきたものを、自分の15分で85点に引き上げる。この割り切りができるかどうかが、AIを使いこなせるかの分かれ目だと思う。
まとめ
一人社長の課題は「全部自分でやらないといけない」ことだ。人を雇う余裕がないなら、AIに役割を分けてチームとして動かすという選択肢がある。
月2万円、1日15分。これで自社事業が回る状態を作れたのは、僕にとって大きな変化だった。
大事なのは、AIに「何でもやって」と丸投げしないこと。役割を明確にして、ルールを言語化して、段階的に構築する。やっていることは、人間のチームを作るのと変わらない。
一人で全部抱えている社長にとって、この記事が何かのきっかけになれば嬉しい。
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