著者: 野原琉海(株式会社ラズリ代表)
たまに妄想する。
僕は今、従業員ゼロの会社をAIで回している。バックオフィスはほぼ自動化して、1日の稼働は15分以内。これは何度もこのブログで書いてきた。
でも、ふと思う。もし僕が従業員10人くらいの「普通の会社」に放り込まれたら、何をするだろう?
社長に「うちの業務、全部効率化してくれ」と言われたら、僕は最初の1ヶ月で何をやるか。今日はその妄想を書く。
1日目:まず何もしない
いきなり何もしない、という話をする。
普通は「まずAIツールを導入しましょう!」みたいな話になると思う。でも僕はやらない。初日は観察する。
誰が何をやっているのか。どこで手が止まっているのか。何に時間がかかっているのか。
これ、自分の会社で失敗して学んだ。最初から「これを自動化しよう」と決め打ちでやると、実は大して時間がかかっていない作業を自動化して、本当のボトルネックを見逃す。
だから初日は、社員の横に座って、ひたすら見る。できれば全員分。
たぶん「この人、1日の半分くらいコピペしてるな」とか「この作業、3人が別々にやってるけど1人分の仕事じゃん」とか、すぐに見えてくる。
1週目:一番面倒くさがられている作業を1つだけ潰す
観察して分かったボトルネックの中から、「社員が一番面倒くさがっている作業」を1つだけ選ぶ。
なぜ「一番大きい課題」じゃなくて「一番面倒くさがられている作業」なのか。
理由は簡単で、面倒くさがっている作業を潰すと、社員が味方になるからだ。
「あの面倒な作業、なくなったんですか!?」
この一言が出れば勝ち。次から「あれも自動化できませんか?」と向こうから聞いてくる。逆に、いきなり大きな改革をやると「また上が余計なことを始めた」と警戒される。
僕の経験上、最初に手をつけるのはだいたいこのあたりだと思う。
- 問い合わせが来た時の通知(メールを見に行かなくてよくなる)
- 毎月の請求書をフォルダに整理する作業
- 週次レポートの数字集め
どれも1日あれば仕組みを作れる。技術的には大したことない。でも、毎日やってる人にとっては革命的に楽になる。
2週目:「この会社、何に一番お金を使ってるんですか?」と聞く
自動化の話から一瞬離れる。
2週目に僕がやるのは、社長に「この会社、何に一番お金を使ってますか?」と聞くこと。
答えはだいたい「人件費」だ。従業員10人で年商1〜2億の会社なら、人件費が売上の40〜50%を占めていることが多い。
で、次に聞く。「その人件費のうち、判断が必要な仕事と、判断が不要な定型作業の割合はどのくらいですか?」
これに即答できる社長はほぼいない。でも、ざっくりでいいから考えてもらう。
僕の感覚では、中小企業の事務系業務の6〜7割は「判断不要の定型作業」だ。決まったフォーマットに数字を入れる、同じ手順でファイルを整理する、同じ文面のメールを送る。
この6〜7割をAIに置き換えたらどうなるか。人件費が4割減る、とは言わない。でも、同じ人数でもっと多くの仕事を回せるようになる。新しく人を雇わなくても、今の10人で15人分の仕事ができる。
これが自動化の本当の価値だと思っている。「人を減らす」じゃなくて「人を増やさなくて済む」。
3週目:経理に手を入れる
2週間で信頼を得たら、いよいよ経理に手を入れる。
なぜ経理かというと、一番効果が分かりやすいからだ。「月末に3日かかっていた作業が半日で終わる」みたいな、数字で見える成果が出る。
やることはシンプルだ。
まず、請求書がどこから届くかを全部洗い出す。メールで来るもの、郵送で来るもの、PDFで来るもの。届き方がバラバラなのが、経理が辛い最大の原因だ。
次に、メールで届く請求書だけ先に自動化する。Gmailに届いた請求書をAIが検知して、振込先・金額・支払期日を一覧表にまとめる。これだけで経理担当の月末の作業が激減する。
郵送の請求書?正直、これはすぐには自動化しづらい。スキャンする手間が残る。でも、メールの分だけでも自動化できれば、全体の処理量は半分以下になるはずだ。
完璧を目指さない。半分でいい。半分自動化するだけで、経理担当の月末の顔色が変わる。
4週目:社長の1日を取り戻す
最後に社長だ。
中小企業の社長は、だいたい1日の3割くらいを「本来やらなくてもいい仕事」に使っている。承認待ちのハンコ、転送するだけのメール、出なくてもいい会議。
これを全部特定して、仕組みで回す。
- 承認フローは金額で分ける。10万円以下は部門長の承認だけで通す
- 「社長に聞かないと分からない」案件は、判断基準を文書化してAIに持たせる
- 会議は議事録をAIが自動作成。社長は結論だけ読めばいい
社長の1日から2時間取り戻せたら、その2時間で営業に行ける。新規の取引先と話せる。採用面接ができる。
社長の時間は会社の中で一番高い。時給に換算したら、従業員の2〜3倍はある。その時間を雑務に使っているのは、会社として一番もったいないことだ。
この妄想は、半分くらい現実にできる
1ヶ月で全部やれるかと言われると、正直きつい。でも半分くらいはいける。
僕が自分の会社でやったことをベースに書いているから、技術的にできることしか書いていない。問い合わせの通知なら1時間で作れる。請求書の自動検知は数日あれば動く。
問題は技術じゃない。「やるかやらないか」と「どこから手をつけるか」だ。
一番やってはいけないのは、全部を一気にやろうとすること。1つずつ。面倒くさい作業を1つ潰す。味方を1人作る。その繰り返し。
もし「うちの会社でやったらどうなるか」を一緒に妄想してみたい方は、こちらからお問い合わせください。妄想から始めて、現実にするところまでお手伝いします。