「業務を効率化したいが、システム開発を外注する予算はない」「ツールを導入したいが、社内にITに詳しい人間がいない」
こういう状況の会社で、最近選ばれているのがノーコードツールだ。プログラミングを書かずに業務アプリや自動化の仕組みを作れる。エンジニアへの外注なしで、事務担当者が自分で設定できるものも多い。
ただし「ノーコードを導入すれば全て解決」ではない。向き不向きがあり、合わない用途に使うと「設定したが誰も使わない」で終わる。
この記事では、中小企業がノーコードで実際に改善できる業務と、用途別のツールの選び方を整理する。
ノーコードとは
ノーコードとは、プログラミングコードを書かずにシステムやアプリを作れる手法のことだ。
従来は「業務管理システムを作る」となると、開発会社への外注が前提だった。要件定義から完成まで数ヶ月、費用は数百万円というケースも珍しくない。その後の改修のたびに追加費用がかかる。
ノーコードはこの構造を変えた。ドラッグ&ドロップや画面上の設定だけで、業務アプリを自分で作れる。外注を挟まないため、改善サイクルが速い。「やっぱりこの項目を追加したい」という変更も、自分でできる。
ノーコードで改善できる業務の3パターン
中小企業でよく使われる用途は3つに分けられる。
パターン1:業務アプリの作成
顧客管理、案件進捗、日報、在庫管理、社内申請など。Excelで管理していたデータを、複数人が同時に更新・参照できるアプリにする。
現場でよく起きているのはこういう状況だ。
- 担当者しか触っていないExcelがあり、内容がいつも古い
- ファイルを誰かが開きっぱなしで、他の人が編集できない
- 外出先から確認・入力ができないため、担当者に電話で確認している
これらをノーコードで作ったアプリに移すと、スマートフォンからも入力・確認でき、複数人がリアルタイムで更新できる状態になる。
パターン2:ツール間の自動連携
「問い合わせフォームに入力があったら、Slackに通知する」「スプレッドシートに行が追加されたら、担当者にメールを送る」といった、ツール同士をつなぐ自動化だ。
手作業でやっていたコピー&ペーストや転記作業を、一度設定すれば自動で動くようにする。
パターン3:社内申請の電子化
紙やメールでやり取りしていた社内申請(経費精算、有給申請、備品購入など)をフォームで受け付け、承認フローをシステム化する。
「申請書を印刷して上長に回す」「承認されたかどうかを都度確認する」という往復がなくなる。
用途別のツール選び
業務アプリ作成に向いている:kintone
サイボウズが提供するクラウド型の業務アプリ作成ツールだ。日本語インターフェースで、IT担当がいない会社でも社内担当者が設定できる。
ドラッグ&ドロップでフォームを組み合わせて、自社の業務フローに合ったアプリを作る。顧客管理・日報・案件管理・申請管理など、幅広い業務に使える。複数のアプリをつなげることもできる。
料金
| プラン | 月額/ユーザー |
|---|---|
| ライト | 1,000円 |
| スタンダード | 1,800円 |
最低10ユーザーからの契約なので、スタンダードでは月18,000円から。複数人で共有する業務を複数抱えている場合にコストパフォーマンスが出る。従業員3〜4人規模の会社で「1つのデータを管理したい」だけなら、コストが合わないことも多い。
Googleスプレッドシートを活用するなら:AppSheet
Googleが提供するノーコードアプリツールだ。GoogleスプレッドシートのデータをそのままアプリのUIで表示・更新できる。既にスプレッドシートで管理しているデータがある会社は、移行コストが低い。
スマートフォンからも入力・確認ができるため、外出が多い営業担当や現場作業員が使う用途に向いている。
料金
| プラン | 月額/ユーザー |
|---|---|
| 無料 | 0円(10人まで、アプリ非公開の場合) |
| Starter | 約750円(月5ドル) |
kintoneより安く始められるため、小規模なチームでの試験導入に向いている。「まず3人で試してみる」という使い方ができる。
ツール間の自動連携なら:Make
Makeは、異なるツール同士をつなぎ、自動化ワークフローを作れるサービスだ(旧称:Integromat)。
「Googleフォームへの入力があったらSlackに通知」「スプレッドシートに行が追加されたらメール送信」といった連携を、画面上のビジュアルで設定する。日本語インターフェースが整っており、設定は比較的わかりやすい。
2,000以上のサービスに対応しており、Gmail・Slack・Googleスプレッドシート・kintone・Notionなど、中小企業がよく使うツールのほぼ全てと連携できる。
料金
| プラン | 月額 | 処理数 |
|---|---|---|
| 無料 | 0円 | 月1,000クレジット |
| Core | 約1,350円(月9ドル) | 月10,000クレジット |
1クレジット=1モジュールの1アクションに相当する。シンプルな自動化(「フォームに入力 → Slackに通知」2ステップ)であれば、1回あたり2クレジットの消費だ。月に数十〜数百件の処理なら無料プランで十分使えることが多い。
失敗しない始め方
最初は1つの業務に絞る
「全社のシステムをノーコードで作り直す」という目標から始めると、ほぼ失敗する。作りかけで止まるか、誰も使わない状態になる。
現実的なのは「今最も困っている業務を1つだけ改善する」という絞り込みだ。
たとえば「毎週月曜に担当者が手入力しているExcel集計を自動化する」「営業が外出先から報告書を入力できるアプリを作る」という具体的な1件から始める。1件うまくいけば、次の業務に応用できる。
担当者を1人決める
ノーコードツールは直感的だが、設定作業は発生する。「誰がやるか」を決めずに始めると、誰も触らないまま放置になる。
ITの専門知識は不要だが、「新しいツールを試すことに抵抗がない人」が担当になると定着しやすい。担当者が自分で設定・改善できる状態を目指す。
ノーコードが向かないケース
以下の条件がある場合は、ノーコードだけでの解決が難しいことが多い。
- 既存の基幹システムや会計ソフトとの深い連携が必要: 既製の連携機能がないシステムとつなぐには、API開発が必要になるケースがある
- 細かい権限制御が必要: 部門や役職ごとに表示内容を細かく制限したい場合、ノーコードの制限にぶつかることがある
- 数万件以上の大量データを処理したい: 大量データの処理や複雑な集計には、ノーコードツールでは動作が遅くなることがある
このような要件がある場合は、最初からシステム会社やIT顧問に相談した方がいい。
まとめ
ノーコードで改善しやすい業務と、向いていない業務を整理すると以下のとおりだ。
| 用途 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 業務アプリ作成 | 複数人で管理するデータ、日報・申請管理 | 既存システムとの深い連携が必要な場合 |
| 自動連携 | 手作業のコピー&ペースト、通知作業 | 複雑な条件分岐が多い処理 |
| 申請ワークフロー | 紙・メールでの社内申請 | 法的拘束力が必要な手続き |
「まず1つ、現場で困っている業務を選んで試してみる」という進め方が現実的だ。いきなり全社展開を目指すより、小さく始めて確認しながら広げる方が定着する。
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