「3ヶ月だけブログを書いて、その後ぱったり止まっている」
業務効率化に特化したエンジニアとして中小企業のシステム設計を手伝っていると、この状況をよく見かける。社長が一念発起して始めた情報発信が、気づいたら数ヶ月でゴーストタウンになっている。
「なぜ止まったんですか?」と聞くと、たいていは「ネタがなくなった」か「忙しくなった」と返ってくる。でも実際に話を聞いていくと、ネタは存在している。問題はネタではなく、仕組みがないことだ。
この記事では、AI顧問がマーケ支援において何をするのかを具体的に整理する。「AIが自動で記事を書いてくれる」というイメージが先行しているが、実態はもう少し手前の設計の話だ。何が自動化できて、何はできないのか。コンテンツ制作代行との違いは何か。実際に動かしてみて気づいたことも含めて書いていく。
発信が続かない本当の理由
情報発信が途中で止まる理由は「時間がない」だけではない。経験から言うと、3つのパターンが重なっている。
パターン1:ネタの言語化ができていない
「自社に発信できることがない」と言う経営者でも、話を聞くと面白いネタがいくつも出てくる。問題は、そのネタが「自社の強み」として言語化されていないことだ。言語化されていないから、書こうとしたときに「どう書けばいいか分からない」で止まる。
パターン2:フィードバックループがない
「書いたけど誰も読まなかった」という体験を繰り返すと、継続が難しくなる。何がうまくいって、何がダメだったのかが分からないまま更新し続けるのは、精神的にきつい。
パターン3:担当者に任せたら文体が変わった
従業員に投稿を任せたら、会社のトーンと合わない文章になっていたというケースも多い。修正のやりとりが発生するか、品質を諦めるかの二択になって、どちらも続かない。
AI顧問のマーケ支援は、この3つを仕組みとして解決することに向いている。
AI顧問がマーケ支援で担う範囲
「AI顧問=AIが記事を書いてくれる人」という理解は半分正しく、半分ずれている。
AI顧問がマーケ支援で担うのは、主に以下の4つだ。
- 発信テーマの言語化支援:自社に眠っているネタを引き出し、発信すべきコンテンツを整理する
- AIを動かすためのプロンプト設計:記事やSNS投稿を生成するためのプロンプトテンプレートを設計する
- ワークフローの構築:「ネタ → 構成 → 下書き → 確認 → 公開」を誰でも回せる仕組みにする
- 品質管理の仕組み化:ブランドトーンを定義し、生成物がそこから外れないようにチェックフローを設計する
担わないことも明確にしておく。最終的な公開判断や誤情報の責任は人間が取る必要がある。確認工程を省いて全自動にする運用は、今の技術では品質を担保できない。
「AIに任せたらブランドが崩れる」という意見をよく聞く。ブランドトーンを先に言語化して、それをAIに渡す設計ができていれば崩れない。むしろ、担当者によって文体がばらばらになっている現状の方が崩れている、というケースの方が多い。
コンテンツ制作代行との違いを一言で言うと、代行サービスは「作ってくれる人」で、AI顧問は「作れる仕組みを設計してくれる人」だ。前者はお金を払い続けないとコンテンツが出てこない。後者は仕組みが社内の資産として残る。AI顧問がどのような場面で機能するかの全体像はAI顧問とは?中小企業が知るべきサービスの全体像と費用相場に整理している。
記事自動生成の実際の流れ
抽象的な話をしても分かりにくいので、ジムフリ(このメディア)での実際の動かし方を書く。
ジムフリでは月30本を継続的に出している。全工程でAIを使っているが、「AIが全自動で書いている」わけではない。
- キーワード選定:コンテンツカレンダーから候補を選ぶ
- 競合調査:上位記事の構成をAIで調査・整理する
- 構成案作成:構成案をAIで生成し、必要に応じて修正する
- 本文下書き:構成案に基づいてAIが下書きを生成する
- 確認・修正:事実誤認がないか、ブランドトーンから外れていないかを確認する
- 公開:チェックを通過したものを公開する
設計前後で比べると、確認・修正に使う時間が大幅に減った。「ゼロから書く」だったものが「生成されたものを確認する」に変わったためだ。
実際に使っているAIツールは、競合調査にWebSearch機能、下書き生成にClaude(claude.ai)の組み合わせが中心だ。「このAIツールがあれば完結する」という魔法のツールがあるわけではなく、既存のAIサービスを工程ごとに使い分けることになる。AI顧問が設計するのは、このツール組み合わせとワークフロー全体だ。
工程5の確認・修正を省略しないことが重要だ。AIは事実と推測を混同することがある。特に数字や法律の話が絡む場合は、必ず原情報に当たる必要がある。
SNS投稿の自動生成──ネタ出しから投稿文まで
SNS投稿で「ネタがない」と感じる経営者に聞くと、実は日常業務の中にネタが大量にある。顧客からもらった質問、対応した事例、判断に迷った場面、気づいたこと。これらを言語化すれば投稿になる。
問題は「それを発信できる言葉にする手間が面倒」という点だ。ここにAIが使える。
例えば「今週、顧客から請求書の送り方について質問があった」という箇条書きをAIに渡すと、「請求書フローを変えたら確認の手間がなくなった話」のような投稿タイトル案が複数出てくる。「何を書くか」の起案が不要になり、「どれを選ぶか」の判断だけに集中できる。
実際のワークフロー例:
- 週次ネタ収集:その週に起きたこと・相談されたことをNotionなどに箇条書きで記録する
- 投稿案生成:箇条書きをAIに渡し、投稿文案を複数出してもらう
- 確認・選択:複数の案から使えるものを選び、必要なら修正を加える
- スケジュール設定:Bufferなどのツールで投稿日時を設定する
週1回の作業で1週間分の投稿が設定できる。SNSごとに文体が変わる点(LinkedInはフォーマル寄り、Instagramはビジュアルとセットなど)も、プロンプトで設定できる。
AI顧問が介在することで、このワークフロー設計とプラットフォームごとのプロンプト整備をまとめてやってもらえる。自社でゼロから設計しようとすると、「どのプロンプトが使えるか」を試行錯誤するだけで相当な時間がかかる。
量が増えると質が下がる、という印象を持つ人は多い。実際には、ワークフローを正しく設計すると逆のことが起きる。毎回ゼロから書くと揺れが生じるが、プロンプトと確認フローが固定されると品質が安定してくる。
コンテンツ制作代行との費用と仕組みの違い
コンテンツ制作代行サービスで記事を月10本程度量産する場合、月10万〜30万円が一つの相場感になる(専門性や取材の有無によって幅がある)。品質を担保してもらえる反面、構造的な課題がある。
- ノウハウが社内に残らない:代行業者に作ってもらっているため、契約を止めると何も残らない
- 担当者が変わると文体が変わる:ライターの入れ替わりで声調が変わり、ブランドの一貫性が崩れる
- 修正のやりとりに時間がかかる:「こういうトーンにしたい」を言葉で伝え続けるのは手間だ
AI顧問でコンテンツ自動化の仕組みを設計してもらう場合、月額の費用感についてはAI顧問の費用相場|月額3万〜30万円の価格帯と内訳でまとめている。最初の数ヶ月で「自社が動かせる仕組み」が出来上がり、その後は社内で回せるようになる。
ただし、「AI顧問の方が必ず良い」という話ではない。コンテンツの品質を短期間で一定量担保したい場合や、社内に確認できる人間が一人もいない場合は、代行サービスの方が現実的な場合もある。
ブランドトーンが崩れる問題をどう防ぐか
「AIに任せたら、なんか違う文章が出てきた」は実際に起きる。僕がジムフリの設定をしていたとき、ChatGPTに記事を書かせると「昨今、○○が重要視されています」「貴社の業務効率化を支援するために」のような文体が出てきた。このメディアのトーンとは全然違う。
原因はシンプルで、「このメディアはこういう言葉を使う・使わない」という定義をAIに渡していなかったからだ。
AI顧問がマーケ支援で最初にやることの一つが、このブランドトーンの定義だ。
- 使う言葉・使わない言葉のリスト
- 一人称の設定(「私」か「僕」か「当社」か)
- 文章の硬さの設定(BtoBか、読み物寄りか)
- 避けるべき表現(誇大表現、ポエム系のフレーズ)
- 既存コンテンツの中から「これがうちのトーン」という例文集
これをAIに渡すことで、生成された文章がブランドから外れにくくなる。完全に防ぐことはできないが、外れたときに気づきやすくなる。確認工程は残るが、最初から外れにくい文章をチェックするのと、半分くらい外れているものを直すのでは、かかる時間が全然違う。
どんな会社が向いているか──正直な適性チェック
AI顧問のマーケ支援が向いている会社には、共通点がある。
向いている条件
- 発信できる素材(業務の実例、知識、顧客への回答)がある
- 週1〜2時間、確認と修正に使える人間がいる
- 「ゼロから全部自動化してほしい」ではなく「仕組みを一緒に作りたい」というスタンス
- 3〜6ヶ月で仕組みを育てるつもりがある
向かない条件
- そもそも何を発信するか決まっていない(ここはAI顧問の前に整理が必要だ)
- 確認する人間がいない(完全自動化は品質を担保できない)
- 1ヶ月以内に成果(問い合わせ・フォロワー増加)を求めている
正直に言うと、「AI顧問に任せたら発信が全部自動になる」は少し違う。正確に言うと、「発信の大半をAIが下書きし、人間が短時間で確認・修正するフローに変わる」だ。人間の確認を前提にした半自動が、今のところ現実的なラインだ。
最初の1週間でできること
AI顧問に依頼するかどうかに関わらず、まず自分でできることがある。
ステップ1:過去3ヶ月の発信内容を一覧にする
ブログ、SNS、メルマガ何でも良い。過去に出したものを並べると、「どんな話をしていたか」「どれが反応が良かったか」が見えてくる。
ステップ2:反応の良かった投稿のパターンを言語化する
「具体的な失敗談を書いたら反応があった」「数字を入れたら拡散された」「質問に答える形式が読まれやすかった」というパターンを、できるだけ言葉にする。
ステップ3:ブランドトーン定義シートを作る
A4一枚で良い。使う言葉・使わない言葉、一人称、文章のトーン、避けたい表現を書き出す。これがあると、AIへの指示の精度が大幅に上がる。
この3つをやっておくと、AI顧問に相談するときの初期コストが下がる。自社の発信について整理できていない状態で依頼すると、整理の時間がそのまま費用になる。
まとめ
AI顧問のマーケ支援は、「AIが代わりに記事を書いてくれる」ではなく、「自社がコンテンツを継続的に出せる仕組みを設計してもらう」というものだ。
発信が続かない本当の理由はネタや時間ではなく、仕組みがないことが多い。仕組みが動き始めると、発信のハードルが下がり、継続が現実的になる。
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